葉山の住宅 16

「家のどこかに左官を取り入れたいんですよね。」

去年の冬、打合せのときに

お施主様からそうお話がありました。

以前、仕事関係の展示会で

左官を間近で見る機会があったお施主様は

そこである左官職人の方と出会ったのだそうです。

 

「その方は湯河原にいらっしゃるのですが

ぜひ機会があったら見に行ってきてほしくて。

そして一緒に仕事をしてほしいなと思います。」

 

それからしばらく時間が空いてしまいましたが

実施設計を終え、

大工工事が入らない現場の合間を確認して

行くなら今しかない!

とばかりに

私たちは湯河原にある

長田左官工業へ訪れたのでした。

 

表情のある漆喰。

ぽってりとした厚みが

なんとも言えずゆたかです。

真壁という柱と柱の間に壁が入る

日本建築の伝統的な納まりがあります。

その壁の下地を木舞といいますが

むかしは竹で組まれていました。

左官壁の一部をあえて仕上げずに

木舞を見せている意匠です。

磨き。

これは磨きのなかでも最も有名な大津磨き。

上塗りに色土と石灰、スサ(亀裂防止・保水)を使用し

材料に糊を入れずにコテを何度も押さえて

緻密な肌に仕上げていきます。

光をやわらかく反射するので

とても上品な印象です。

青の磨きを。

お施主様からの希望を伝えると

左官職人の長田さんは

さまざまな青のサンプルを

つくってくれていました。

壁の出隅に使うコテ。

左官でしかできない仕上がりにするため

大きめの30Rのものに決まりました。

モルタル左官床。

モルタルの可能性が広がります。

これは研ぎ。

表面が非常になめらかです。

色漆喰。

光をすっと、やわらかく吸収するような

やさしいマットな質感です。

 

工房を出たあと、

実際に長田さんが手掛けられた

建物をいくつか案内していただきました。

写真は箱根ルッカの森という

バウムクーヘンのお店です。

外にも、内にも。

床にも、壁にも。

直線にも、曲線にも。

左官は境界線を越え

縦横無尽に建物を仕上げることのできる

古くて新しい材料なのだなあと、

新発見の小旅となりました。

 

 

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